石器文化研究会設立25周年記念シンポジウム
 
「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か
            −概念と実態を問い直す−」

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石器文化研究会設立25周年記念シンポジウム
 「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か−概念と実態を問い直す−」
開催趣旨
 「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」という用語・概念、それをめぐる研究と議論は、日本の旧石器(先土器・岩宿)時代研究を象徴するものである。
 群馬県岩宿遺跡の発見にはじまる日本の旧石器(先土器・岩宿)時代研究は、現実には、ヨーロッパにおける先行研究を参照した「旧石器時代」の研究と、縄文土器・縄文時代の起源を追及する「日本列島の先史時代の遡及・拡張」の研究の並列、あるいは相克の中にあった。その中で、当初Backed blade、Knife bladeと称された石器は、やがて「ナイフ形石器」となり、「日本の旧石器時代」を特徴づけるものとしての位置づけを与えられた。以後、その分布の広がりと時間的変遷の中での多様性が明らかになると、日本列島における旧石器(先土器・岩宿)時代の時間的-空間的枠組みの編成―すなわち編年研究の主軸は、ナイフ形石器の編年研究とほぼ同義となった。
 そして編年がおおむね完成された1980年代後半以降、研究者の意識は、明らかとなった時間的変遷の中での地域的多様性、または地域間の共通性をどのようにして解釈・説明するか、その枠組みをめぐる議論へと移っていった。そこにおいては、「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」の用語・概念自体が議論の俎上に載せられ、批判の対象となり、あるいは有効性が主張されている。
 しかしながら、研究史の初期以降、「ナイフ形石器」の定義はたびたび変更―というよりも拡張されてきたことは明白であるが、そのことを総括的に見直す取り組みはほとんどなされていない。研究者の意識が、編年の構築から、その成果の解釈・説明へと移ってゆく中でも、対象自体へ向けられる批判的な視線はきわめて乏しい。「ナイフ形石器」あるいはその代替用語にしても、その下位分類単位としての「型式」―たとえば「杉久保型」や「国府型」―にしても、異なる立場の間でも具体的な資料として何を指しているのか共約可能な状態である。多くの場合、立場の違いとして示される議論の中心部分は、部分的な差異について言及したものであり、全体的な基盤は共有されているのである。
 石器文化研究会では、1991年の第1回シンポジウム「AT降灰以前の石器文化」以来、第2回「AT降灰以降のナイフ形石器文化」(1996)、第3回「砂川」(2000)、第4回「ナイフ形石器文化終末期再考」(2005)と、「ナイフ形石器文化」をテーマにシンポジウムを開催してきた。結果的に、時系列に沿って「ナイフ形石器文化」の各時期・各段階をひととおり検討してきたことになる。ある意味では、ここ20年近くの「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」研究の中核を担ってきたと言っても過言ではないだろう。しかしこの間にも、いくつもの課題が浮上し、議論されてきた。シンポジウムの回を重ねるごとに、地域的な様相の提示よりも、多様な研究視点の導入による解釈・説明の比重が増してきたことは、内容からみても明らかである。
 そして時系列に沿った検討が一巡した2006年度からは、統一テーマとして「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か」を掲げ、「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」についての問い直しを試みきた。そこでは、ナイフ形石器を中心とする石器群、その石器群にともなう考古学的事象、さらにその時代・時代性(地域や時期、その区分の問題も含めて)の全体を対象とすることを目指してきたが、結果として「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」という用語そのものが、必然的に議論の枠組み、方向性を決してしまうという状況も浮き彫りになってきた。あるいは石器文化研究会だけにとどまらず、遺跡数・資料数からみてもっとも多いはずの「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」を対象とする研究が学界全体としても低調なのは、そうした議論の行き詰まり感の反映なのかもしれない。
 もちろん、研究史の中でかたちづくられ、共有されている基盤を、ただちに解体して再構築しなければならないというわけではない。しかし、それを大きく揺り動かして、まだまだ基盤足り得るものなのか、一部の修整や再定義を行なうべきなのか、あるいは新たなものに置き換えるべきなのかを検討すべき時期に差しかかっていることは間違いない。
従来の概念・用語を所与の前提とする議論は、新たな展開を生み出すことはできない。とは言え、概念・用語をただ置換するだけでは、問題を明らかにすることはできない。いま求められているのは、「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」という概念・用語についての学史的な総括と、最新の取り組みにもとづく再構築ないしは脱構築である。そのためには、1950年代後半に定立され、以後、50年をこえる研究のあゆみの中で拡張されながら保持されてきた「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」概念の歴史的背景と実態を、いまいちど批判的に検討する必要がある。また、1990年代後半より展開してきた新たな視点・方法論−行動論・技術論・動作連鎖論・ジオアーケオロジーなど−にもとづき、これまで「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化」とされてきたものの内部、および外部との差異・共通性を明らかにすることも必要であろう。
石器文化研究会では、このような問題意識のもと21世紀の新たな研究の潮流を志向し、シンポジウムを企画・実施する。
開催日・時間
日 時:2011年1月22日〜23日(22日:9:40〜17:00、23日:9:00〜17:00)
会 場
明治大学駿河台校舎リバティータワー8F 1081教室(両日とも)
プログラム
第1日目(1月22日)
  記念講演 「日本列島の旧石器時代研究における石器と文化の区分」 (安蒜政雄:明治大学文学部教授)
 第1部 ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か−研究史・現状・課題−
(司会:富樫孝志)
基調報告1 「日本旧石器時代」とナイフ形石器文化 
基調報告2 ナイフ形石器・ナイフ形石器文化を見直す−視点・枠組み・方法−
(西井幸雄:(財)埼玉県埋蔵文化財調査事業団)
(野口 淳:明治大学校地内遺跡調査団)
 第2部 枠組みと構造−分析の視座と展望−
(司会:野口 淳)
基調報告3 石器形態研究の原則と後期旧石器時代前半期の石器素材利用形態をめぐる研究
          −「ナイフ形石器」・「ナイフ形石器文化」概念の利点と問題点−
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基調報告4 動作連鎖からみたナイフ形石器文化                  
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基調報告5 石材開発領域からみたナイフ形石器
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基調報告6 遺跡形成過程研究からみたナイフ形石器文化
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基調報告7 ナイフ形石器の出現と成立
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基調報告8  いわゆるナイフ形石器文化「後半」を考える
          −技術構造と両面石器リダクションに注目して−
        コメント

(山岡拓也:首都大学東京都市教養学部助教)
(富樫孝志:(財)静岡県埋蔵文化財調査研究所)

(鈴木美保:明治大学校地内遺跡調査団)
(長井謙治:日本学術振興会特別研究員)

(国武貞克:(独)国立文化財機構 奈良文化財研究所)
(川口武彦:水戸市教育委員会)

(坂下貴則:明治大学校地内遺跡調査団)
(及川 穣:(独)国立文化財機構 東京国立博物館アソシエイト・フェロー)

(仲田大人:青山学院大学文学部講師)
(島田和高:明治大学博物館学芸員)


(長沼正樹:北海道大学アイヌ・先住民研究センター研究員)
(岩瀬 彬:首都大学東京大学院博士後期課程)
第2日目(1月23日)
 第3部 ナイフ形石器・ナイフ形石器文化を問い直す1−各地の実相から−
(司会:富樫孝志・野口 淳)
基調報告9 石器群の広域編年からみた地域社会の形成過程
          −多様な系統の理解と「ナイフ形石器文化」−
        コメント 北海道・東北地方から
        コメント 関東・東海・中部地方南部から
        コメント 中部地方北部・北陸地方から
        コメント 近畿・中四国地方から
        コメント 九州地方から

(森先一貴:(独)国立文化財機構 奈良文化財研究所)
(吉川耕太郎:秋田県立博物館)
(中村雄紀:静岡県埋蔵文化財調査研究所)
(加藤 学:新潟県埋蔵文化財調査事業団)
(光石鳴巳:奈良県立橿原考古学研究所)
(松本 茂:宮崎県埋蔵文化財センター)
第4部 ナイフ形石器・ナイフ形石器文化を問い直す2−新たな地平を目指して−
(司会:野口 淳・富樫孝志)
        パネルディスカッションおよび会場質疑 
               パネラー 砂田佳弘・諏訪間 順・佐藤宏之・伊藤 健・西井幸雄 および基調報告発表者・コメンテーター
        @はじめに       −議論の前提として−基本的な論点を整理する
        A第1部について   −学史・研究史・理論・方法について−何を、どのように考えるべきか
        B第2部について   −いま、なにが課題なのか−広がる研究テーマ、その位置づけ
        C第3部について   −各地の実相にもとづく議論−比較対象軸としての編年の先へ
        D最終討論      −現状・課題・展望−
    講 評〔総括〕
(白石浩之:愛知学院大学教授)

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